- それ
- I
それ(感)〔代名詞「それ」から〕相手の注意を喚起したり指示したりするときに用いる語。 そら。
「~急げ」
~来た待ちかまえていたものが来た場合や, 相手から物を受け取ったりする場合に発する語。「『重いぞ』『~, しっかりほうれ』」
~御覧(ゴラン)自分が以前に言っていたとおりになったとき, 相手に言う語。 どうだ。 私の言ったとおりになっただろう。「~, やっぱり降ってきたじゃないか」
~見たことか相手が自分の忠告などを無視して失敗したときなどに, 相手に言う語。 それ見たか。 それ見ろ。「~, 僕の忠告を無視するからだ」
~見ろ「それ見たことか」に同じ。IIそれ【其れ】※一※中称の指示代名詞。(1)話し手からは少し離れていて, 聞き手の方に近いと考えられる物事を指し示す。「あれじゃない, ~だ」「君のわきにある, そう, ~だ」
(2)話し手が聞き手と共通の話題としてとり上げたり, 今述べられたりした物事を指し示す。「~とこれとは話が別だ」「~は~として」
(3)話し手が, 聞き手と共通の話題にしている時を指し示す。「~以来つきあっていない」「~までは旧式の機械を使っていた」
(4)直前に出た言葉を, すぐ次に繰り返す代わりに用いる語。「ヘーゲルの弁証法とマルクスの~とは全く似て非なるものだ」
(5)直前に話題にした人。 その人。「その時の女御, 多賀幾子と申すみまそがりけり。 ~うせたまひて/伊勢 77」
※二※人代名詞。 二人称。 あなた。 おまえ。「~はさこそ思すらめども, おのれは都に久しく住みて/徒然 141」
※三※不定の指示代名詞。 事物の名を伏せていうときなどに用いる。「~の年の師走の二十一日の戌の時に/土左」
~かあらぬか(1)それか, そうでないか。「物よりのぞきなどして, ~と見定むとなむ/源氏(浮舟)」
(2)そのせいかどうか。「深く毒薬の真理を究(キワ)めたりなど云へる風評(ウワサ)も有り。 ~梅真女の家は庭木までも伊太利其他の遠国より取寄せて/鉄仮面(涙香)」
~でいてそうでありながら。 それでいながら。 そのくせ。「自分は何もしないくせに, ~口だけは一人前だ」
~でこそそうであって始めて。「よくぞ言った。 ~私の息子だ」
~でなくてもそのことがなくても, きわめて程度がはなはだしいさまを表す語。 そうでなくても。 ただでさえ。「~忙しいのに, つまらない話を持ち込まないでくれ」
~というのも前の事柄を受けて, その理由や説明などを述べるときに用いる語。 なぜなら。「貸してやりたいができないんだ。 ~僕も金がないから」
~となくそれと明示せずに。 はっきり言わずに。 遠回しに。「~におわせる」
~と(は)なしにそれとはっきりいわずに。 それとなく。 遠回しに。「~内情を聞き出す」
~にしてはそうであるわりには。「台風が近づいているというが, ~静かだ」
~にしても(1)そうであるとしても。「会合があると言っていたが, ~帰りが遅い」
(2)話題を転換するときに用いる語。「~寒いね」
~につけてもそのことに関連しても。「~大変お世話になりました」
~にとりてその場合に。 それに関して。「碁を打つ人, …人に先だちて小を捨て大につくが如し。 ~, 三つの石を捨てて十の石につくことは易し/徒然 188」
~にひきかえそれとくらべて。→ ひきかえ※二※~にもかかわらずそれなのに。→ にもかかわらず※二※~のみそれだけでなく。 それのみか。「~雨の日のさびしさ, 風の夜はなほ待つ人も見えず/浮世草子・一代男 1」
~は(副詞的に用いて)言葉に表現できないほど。 たいへん。 非常に。 それはそれは。「~美しい景色でした」
~はさておき話題を転じるときに用いる語。 ところで。 閑話休題。「~, 主人公はどうなったかというと」
~はそうと(して)話題を転換する場合に用いる語。 それはさておいて。 それはともかく。 それはそれとして。「~, 奥さんの具合はどうですか」
~はそれとして「それはそうとして」に同じ。~はそれは(1)(感動詞的に用いて)驚いたとき, 感嘆したときに発する語。 おやまあ。 なんともはや。「『先月引っ越しまして』『~』」
(2)(副詞的に用いて)非常に。 とても。「~美しい景色でした」
~はともあれそれはさておき。 それはともかく。~も同じ程度の事柄を付け加えるときに用いる語。III「日曜日で, ~好天気とあって, 球場は満員であった」
それ【夫れ】文の初めに用いて, 新たに説き起こすときに用いる語。 そもそも。 いったい。「~おもんみれば真如広大なり/平家 5」
〔漢文の訓読で用いる〕
Japanese explanatory dictionaries. 2013.